『 剛の太史慈、呂蒙の所作に困惑す 』
呂蒙子明。
俺が任官試験で初めて奴と出会った時は、なんてヘタレた野郎だと思った。
が、ケツに火がつくとなかなか骨のある奴で気に入った。
「太史慈将軍、あなたのように立派に強くなりたいんです!」
そう言うんで、俺は呂蒙の奴を預かることにした。
慕われるのは悪くない。
そうして、奴は任官してからはいつも俺の側に付き従うようになった。
やたら気の利く奴で、まめまめしいというか、甲斐甲斐しいというか…。
気が付くと、公私共に色々と世話を焼かれていた。
特にメシに関しては世話になりっぱなしだ。これがまた美味い。
野菜を喰わそうとするのはいただけないが…。
そんなこんなで、共にいるのが自然になっていた。
そうだな…、まるで嫁さんを貰ったような状態ってところか。
嫁…さん………。
ちょっと待て、例えにしても、嫁はないだろ、嫁は!
こいつは男なんだから。
いくら、ニコニコと笑顔を絶やさず俺の側をチョコチョコと付いてくる様が、なんともカワイくてしょうがないと言っても。
いや、ちょっと待て、男に対してカワイイはないだろ、カワイイは!
しかも、しょうがないってなんだ!
「やぁーーーっ!」
棍棒の一撃が俺の胸に迫る。
自分の思考にパニクっていた俺は一瞬対応が遅れ、よけた拍子に体勢を崩してしまった。
棍棒の先端がピタリと俺の鼻先に突きつけられる。
「やったぁーーー! 一本取ったぁv」
諸手を上げて喜ぶ呂蒙。
くそぅ、俺としたことが、修業中に集中を欠くとは…。
「それにしても、太史慈さまが急に隙を見せるなんてどうしたんですか? なにか気掛かりでも?」
ちっ、目ざとい奴め。
俺は、お前だ、お前、全部お前のせいだ! と言いたい気持ちをグッとこらえた。
けれど少しシャクだったので、呂蒙をジッと睨みつけた。
「な、なんですか…、ぼ、僕、何かしました?」
俺のガン飛ばしにビビる姿は、相変わらずでちょっと面白くもあったが、もう少し何か反応を引き出したいと思った。
こいつが俺の態度に一喜一憂する姿は、本当に楽しい。
そこで俺はおもむろに、グイッと呂蒙の顎を引き寄せ、唇を奪った。
驚いた呂蒙がすぐに離れたので、一瞬の接触にすぎなかったが、呂蒙のやつはすげぇ顔を真っ赤にしている。
「な、な、な、なん、なん、な…」
言葉にならないらしい。かなり想像通りで面白い。
そして、その姿もまたカワイイと思ってしまう。
・・・・・・。
だーかーらー、こいつは男だってぇの。
いや、ちょっと待て、そもそも、いくら腹いせにとはいえ、男相手に接吻って…。
ヤベェな、俺はすでに深みにハマってしまったらしい…。
−了−
( 2007.07.23 里武 )
♂×♂がナチュラルな鋼三ですが、ちょっとくらい逡巡があったほうが萌えるので(私が!)。
呂蒙が‘さま’づけしてますが、これが#09の前とかそういうことはあまり考えてません。
六駿凌家屋敷で合宿状態以前に、二人がどの程度私生活を共にしていたのか不明ですが、‘捏造よろしく’ということで御願いします。追記:ゲームアプリでは、太史慈と呂蒙は兵舎で暮らしていました。
そして、太史慈は呂蒙に無理矢理自分の世話を焼かせていました。