黒色の圧(2006.6.7日記より)

2、3度瞬きふっと電灯が消えた。
暗闇に紛れて、ぷんと黴の臭いが漂ってくる。
あれは何の音? 救急車のサイレン?
いや、死を渇望する犬の遠吠えだ。
黒い遠吠えはべったりと部屋を覆っていく。
死んだ犬と生きている犬。

暫くすると、あなたは徐々に闇に目が慣れてきた。
うっすらと賽の河原が見える。
そこはもうあなたの部屋ではない。
顔のない子供達が石を積む。
一定のリズムで滴り落ちる雫。
ビョオビョオと吹くあの世の風。
あなたは数年前からその景色を眺めているような錯覚に陥る。
長い長い夢である。

寝汗をびっしょりとかいて夢から覚めた。
胸がバクバクと脈打っている。
部屋は明るい。
どこか遠くで寺の鐘が鳴り、カラスが一羽ギャーと鳴いて飛び去った。
あなたは夢と現実の区別がつかない。
この世は夢以上に儚く、生は死以上に何もないものだから。

そして、あなたの頭はキリキリと不思議な音を立てて破裂した。