空中庭園

思考は期待で圧縮され上昇し結露して空中庭園になりました。
でもね、期待が不安を背負い込みすぎ、空に浮くには重すぎて、ぼたん雪のようにドサドサと地上に落ちてきて、再び私の頭に戻ったんでしたとさ。
ちょうど、ウキウキしてひとりだけ飛び出した僕の心臓も、目的地に着き、事が終わり、期待を裏切られ、トボトボと肩を落としながら再び僕の胸に帰ってきたところ。
僕は心臓と思考が再びどこかへ飛び出そうとしているのを手で押さえながら目的地へと急ぐことにしたんだ。
途中で心臓に嫉妬して胃袋が口から飛び出し逃げ出したけど、今は別に胃袋なんていらないからほっとくことにしようね。
一足先に結果を見た心臓が「期待は裏切られるためにあるんだよ」と話しかけてきました。
上空から全てを見た思考が「上ったらあとは落ちるだけだよ」と話しかけてきました。
でもね、僕は勇気を出して行ったんだ。

そしたらね、僕の思考はまた上昇しちゃったんだ。
逃げ出そうとした心臓は片手じゃ押さえきれなくて、その結果、がら空きになった頭から蒸気のように凄い勢いで思考が出て行ったんだよ。
不安のなくなった思考は空中庭園になってそこで彼女とふたりで永遠に過ごすことに決めたんだね。
そして、抜け殻になり地上に佇んでいる私の姿をふたりで笑ったんだ。
可愛そうに、心臓は僕の両手に捕まって悲しそうに泣いてたよ。
いつまでも、いつまでも、思考の無いがらんどうの体に捕まって、朽ち果てても骨の檻に閉じ込められて、淡い絶望に包まれながら、全てが死に絶え止まった時間の中で…。