赤いカラスと炎々燃えゆく逢魔ヶ刻 −2002.7.12日記−

僕はカラスです。

この高いビルの屋上から世界を眺めています。

今、世界が真っ赤に燃えています。
地平線に重なった大きな爆炎が世界中に炎を放っています。

翼のない愚かな人間達が灼熱の炎で焼け死んでいきます。
真っ赤な焼死体が、声にならない断末魔を上げています。
地上はどこもかしこも灼熱地獄で、阿鼻叫喚の歌声が木霊しています。


僕はカラスです。

今、翼を広げて空へと飛びます。
地上が炎火に包まれても、僕は空へと逃げることができます。
翼を広げて炎の向こうへ飛び立ちます。
漆黒の僕の体はどんな業火でも、決して朱に染まることはないのです。


浮遊感、そして落下感。

羽ばたく翼は風を掴まず、僕は一直線に落下していきます。
黒かった体は赤く染まり、小さかった体は本来の大きさを取り戻します。


あぁ、僕はカラスではなかったのですね。
僕は――人間だったのですね。

そして、地面につく前に僕の体は真っ赤に燃え尽きてしまうのでした。